漫画を描くという作業の中で一番好きなのはネームだが

同時に苦行とも思ってる。

若い子は「ネーム嫌い!早く原稿描きたい!」って必ずいう。

斯く言う私も若い頃はネームと言う作業があまり好きではなかった。

若い頃は直感で生きてるというか、自分で描いたもの以外面白いものはないと

思い込んでいるし

周囲の上手い人は目に入らず、自分超天才と自惚れている。

ネームはページ内に話が収まるかどうか

やたら説明ばかり長くて最後が尻切れトンボになっていないか、

キャラが多すぎて収拾つかなくなっていないか、

伝えたいことを伝えているか、独りよがりになってないか、

もろもろ原稿を書く前の大事なプロセスなのに、若さゆえ

担当が付いても絵を描きたい一心で雑然でおおざっぱな話の作り方だった。


しかしそんなネーム嫌いもビッグオリジナル時代鍛えられた。

ある編集さんに納得いく展開や会話やキャラになるまで赤ペンで

何回も書き直しを要求させられた。

伝えたいことが理解されないジレンマとか、自分の書きたい方向では

なかったりとか、それはもうノイローゼになるかと思うくらい

その赤ペン添削が自分的には凄まじいストレスだった。

しかし次第に今度はネームで何も言われないようになろうとがむしゃらに

話を作るようになり、台詞も簡単に吐き出さずキャラが言いそうなことを前よりも

考えるようになったし、こうやったら面白くなるとか違うシチュエーションを

いくつも想像したり、思いが伝わるようにもうネームは原稿の下絵かと言う

くらい丁寧に描いたりしていた。

しかしそうまでしてもなかなかOKは貰えなかったわけなのだが。



他の作家さんはどうかわからないけど、

漫画はネームでほぼ出来上がっていると思っている。

原稿の作画にすーごーく時間をかける人に比べれば私はそこまで

絵にこだわりがない。一時期、細かく入れる時もあったけどあまり

評価されなかったというのもあるが、女性誌を経験して線がすっきりした絵になって

からの評価の方が良かった。



どうでもいいくだらない悩みだが、ネームを大幅に描き直したいとき、

コピー紙を新しくするか消しゴムで消すかですごく悩む。

今はペーパーレスの時代だがデジタルの人はネームもPCなんだろうか?



そのネームだが私の場合、1話のストーリー作りで導入のエピソードと

決めゴマが頭に浮かぶと魔法がかかったようにネームがスムーズになり

あ~ネーム楽しいーるんるんとなる。

しかしこんなことは非常に稀で、毎回毎回うーんうーん唸りながら

頭を掻きむしりながら描いている。

よくアイディアは散歩してたらふいに落ちてきた、とか言うのを聞くけど、

いろんなことに経験豊富なのか、考え方が何通りもあるからなのか実に羨ましい。

自分の場合、イメージがあってもおざなりでついついワンパターンな

思考になりがちで、いつ何時も考えてるが「これー!」と降って湧いてくる

ことはなかなかない。

だから机を前にして腕を組みながらは日常として

お皿洗いながらとか、風呂掃除しながらとか、買い物行く時とかでも

ボーっとネームの事を考えている。

でも大概落ち着いて考える事が出来ないので、寝る前とかお風呂入りながらとか

トイレ行ってる時とか必死にアイディアを抽出しようとする。

それでもなかなか出ず時間だけが刻々と過ぎてゆく。

切羽詰ってくると逆の発想をしようとしたり、全く違う展開にしようと

したりして、お、何だか行けそうだなっとなる。

それでも納得いかない時は原稿の下絵で大幅に直す時もあるし

ペンが入ってから直す時もある。

迷いがあり、そういう直しをやるたび自分には才能がないと思ってしまう。

才能あふれる人が羨ましい。




やれやれ、年賀状や大掃除をやらなくてはならないというのに

いまだネームが上がらず苦行に励んでる・・・